コンプライアンスとは

コンプライアンス(Compliance)とは、本来「(要求、命令などに)従うこと、応じること」という意味です。
が、一般には、法律や規則などを守る法令遵守という意味で使われています。単に民法や刑法といった法律だけでなく、社会的規範や企業倫理を守ることも含まれています。

なぜコンプライアンスに取り組むのか?

食品の産地偽装や、耐震偽装、請負偽装(雇用偽装)、サービス残業(不払い残業)、二重派遣など、目先の利益にとらわれて、法令や倫理を守らなかったために、社会の信頼を失くし、売上の低下につながり、企業存続の危機に追い込まれるケースがたびたびみられます。

このような法令違反による企業・会社のイメージ低下、信頼の失墜を防ぐために、企業に取り組むことが必要とされているのがコンプライアンスです。企業・会社や従業員の違法行為や不正行為を未然に防止する体制、もしも問題が生じたとしても早期に発見することができる体制をつくることを目的としています。

コンプライアンスマニュアルとは

企業の守るべきルールや取り組むべき方針、不祥事が起こった場合の対応や改善策など、状況に応じてどう対処するべきなのかをまとめたものがコンプライアンスマニュアルです。
もちろん、コンプライアンスマニュアルは作成するだけでは意味がありません。役員や従業員全員に周知し、企業全体で取り組まなければいけません。また、法律や規則の変更、環境の変化に応じて、その都度改訂していく必要があります。

コンプライアンスマニュアルの作り方

第1段階「基本理念の確認」

はじめに、企業の基本理念を確認します。

企業が何を第一に取り組んでいるのか、基本となるものがあるはずです。存続していくために取り組んでいる理念、モットー、それが基本理念です。

例えば、安全で安心な質の高い商品を提供することでお客様の信頼を確保すること、働くすべての従業員の人格と個性を大切にすること、安心して働ける職場環境をつくること、失敗やマイナスの情報も共有できる開かれた状況を作ること、利益を上げること、お客様や取引先とのつながりを大切にすること、少しでも社会に貢献できるように取り組むこと、などでしょうか。

経営者・社長の頭の中にはビジョンとして描かれているけれど、文章として明確になっていない場合は、それを文章にすることからはじめます。

第2段階「行動規範づくり」

基本理念を具体的に行動規範として策定します。

企業として取り組んでいることは何なのか、従業員一人ひとりに求めていることは何なのか、これらをまとめたものが行動規範です。

例えば、安全安心の追求、利益と倫理どちらを優先するのかなど、経営に対してどう取り組んでいるのか、反社会的勢力への対応、地域との関わりなど、社会に対してどう取り組んでいるのか、省エネ、リサイクル、CO2(炭酸ガス)問題など、環境問題にはどう取り組んでいるのか、製造する商品の品質に対してどう取り組んでいるのか、苦情処理、商品の情報提供、商品事故が起こった場合の対応など、お客様に対してはどのように取り組んでいるのか、育児休業を取りやすい環境、残業の削減、セクハラ防止など従業員に対してはどう取り組んでいるのか、などです。

企業としての姿勢を明らかにし、実行することが大切です。

第3段階「行動基準づくり」

行動基準とは、遵守すべき法令のほか、企業が目指す経営姿勢やお客様に対する方針など行動規範の内容をより具体的に文章にしたものです。お客様、取引先、従業員などの利害関係者に対する姿勢、責任を具体的にすることで、企業の方針をより明確にできます。また、苦情等、行動基準に基づいた迅速かつ公正な対応をすることができます。

第4段階「コンプライアンスマニュアルづくり」

行動規範、行動基準を基に、コンプライアンスマニュアルを作成します。

企業の存続のために、守らなければならない社会のルール(法令遵守、納税、雇用の維持など)はどんなものがあるのか、現時点将来的なリスクを洗い出し、リスクが問題化した場合、企業にどのような影響を与えるのか、問題解決のためにどんなことをするべきなのか、を検討していきます。企業の規模や特徴、現状に応じて取り組んでいくとよいでしょう。規模の小さい企業では、行動規範、行動基準を作らずに、基本理念を基にしたコンプライアンスプログラムでも十分です。何か問題が発生したとき、発生しそうなときは、マニュアルに沿って問題の調査し真相究明していきます。また再発防止に取り組みます。

余裕があれば、コンプライアンス責任者(コンプライアンスオフィサー)を選出し、コンプライアンス委員会等を設置して組織として確立していきます。

第5段階 実践・行動

コンプライアンスマニュアルを、役員や従業員全員へ浸透させていきます。コンプライアンスマニュアルをただ作成しただけで終わってしまわないためにも大切な過程です。

  1. 定期的なコンプライアンスの研修
  2. コンプライアンスについて定期的なチェック

企業・会社ごとに取り組みや方法は違っていても、共通する目的は「企業の存続」でしょう。倒産させることを目指しているはずがありません。企業の理念は、取り巻く状況にも大きく影響します。バレなければ何をしても大丈夫、といった考え方では存続を望めるはずがありません。従業員やお客様、取引先、その他すべての利害関係者に対して胸をはって堂々としていられる仕事をしていきたいものです。

企業は何をするべきなのか。
大切なのはマニュアルづくりではなく、取り組みが形だけのものになってしまわないように、従業員ひとりひとりの意識にコンプライアンスの精神や倫理を根づかせ、行動していくことです。

コンプライアンス体制がきちんと整い、運用できている企業は、従業員にとって働きやすい職場であることはいうまでもありません。

企業・会社は社会の一部であることを忘れずにコンプライアンスに取り組むことが会社の存続、発展につながります。形にとらわれずに、できることからはじめましょう。



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