社会保険の加入基準

「社会保険に新しく加入したい」
「法人は、加入が義務付けられているから、社会保険に入ります」
理由は、それぞれですが、社会保険(健康保険、厚生年金保険)に新規加入するには、どうすれば良いのか。

法人(株式会社(旧有限会社を含む)、医療法人、社会福祉法人、監査法人・弁護士法人・特許業務法人・税理士法人・社会保険労務士法人など)は、全て社会保険への加入が義務付けられています。従業員数がゼロであっても、役員(取締役、理事、社員など)に役員報酬が支払われる限りは、加入しなければなりません。役員報酬がゼロならば、逆に加入できません。

個人事業の場合は、5人以上従業員がいれば加入は義務、一部のサービス業(飲食業、いわゆる士業など)が適用を除外されているだけです。

つまり、最近株式会社として創業設立した場合で、従業員を1名も雇い入れなくても、社長(取締役)がおり役員報酬が支給されている限りは、社会保険(健康保険・厚生年金保険)へ加入が義務付けられています。副業・兼業・クラウドソーシングで法人を設立した場合も、同様ですので、ご注意ください。

根拠は、健康保険法、厚生年金保険法です。

「今、社会保険に加入するとキャッシュフローが悪くなる」
「売上げが順調に伸びてから、加入することにしよう」
「従業員を雇ったら。。。」
そう言う声をよく耳にしますが、法人設立の時期もよく考えてみては、いかがでしょうか。逆に個人事業であれば、その個人事業主は社会保険に加入できないんです。

このページで言う「社会保険」とは、狭義の意味で使うこととします。とくに注意書きがない場合は「健康保険(医療保険)・介護保険・厚生年金保険(公的年金)」を指しています。

社会保険のメリットは

  • 社会的信用度の向上と、優秀な従業員の確保
    しっかり働くには「社会保険」はあって常識、当たり前の意識です。
  • 最低限の従業員の福利厚生
  • 法律順守(コンプライアンス)姿勢の対外的アピール
  • 社会保険料は、全額所得控除
    全額所得控除で、所得税も住民税も軽減されます。保険料を単純に額面だけで判断することは危険です。実質の負担額がいくらか計算してみましょう。
  • 老後資金の確保
  • いざのときの所得補償
    健康保険には「傷病手当金」「出産手当金」、厚生年金保険には「遺族年金」「障害年金」があります。保険ですので、単純に積立額云々を言うのはナンセンスです。
    (国民健康保険には所得補償の給付はありません。)

窓口は年金事務所

会社が、社会保険の加入手続きをするためには、年金事務所で手続きを行います。

まずは、会社を管轄する年金事務所をホームページなどで確認します。次に、その年金事務所へ出向き、「社会保険に加入したい」と申し出て下さい。ほとんどの場合「強制ですか、任意ですか」と聞かれますが、法人と従業員数5人以上の個人事業は、「強制」ですので、「強制です」と答えてください。
(ネットでも必要書類はダウンロードできますが、保険料口座振替依頼書はその場合郵送で送ってもらいます。)

加入書類一式を受け取り、その場か、会社へ戻った後にでも中身を確認して下さい。必要な書類が書いてあると思います。
次の書類は、見本の記入例どおり記入します。(分からなければ、企業のデータだけでも記入します。)

  • 新規適用届
  • 資格取得届
  • 被扶養者(異動)届

金融機関(銀行、信用金庫など)に口座確認の証明印をもらいます。

  • 保険料口座振替依頼書

添付書類は、原則として次のものだけです。

  • 登記事項証明書(法人登記簿謄本)

年金事務所で受け取った書類の中に、必要書類のリストがある場合は、次の書類なども準備します。

  • 貴社事業所・事務所の賃貸契約書コピー
  • 許認可事業の場合は、許認可通知書等のコピー
  • 税金に関する書類(納付済証か、開設届)
  • 労働保険に関する書類
    労働保険の新規加入時に、労働基準監督署・公共職業安定所で渡された書類
  • 労働者名簿・出勤簿(タイムカード)・賃金台帳
  • 現金出納簿または預金通帳のコピー

加入者(社会保険に加入する役員・従業員)が準備するものは、次のとおりです。

  • 年金手帳(基礎年金番号の分かるもの)
    年金手帳を紛失していれば、「年金手帳再交付申請書」を記入します。
  • 被扶養者に関する書類

年金事務所へ加入の手続きに行く

書類一式が揃えば、年金事務所に提出します。
日本年金機構の事務センターに郵送することもできますのでお忙しい場合は郵送で。お時間を割くことができる場合は、管轄の年金事務所に行きましょう。受付から、だいたい10~30分で書類のチェックと受付が終わります。「いつから社会保険に切り替わるか」確認をしておきます。

不足している書類などは、「郵送で送ってください。」と言われます。加入時の審査は、書類が揃ってから着手されるようですので、早めに送りましょう。

加入の手続き後、2週間以内に「健康保険被保険者証」(カードタイプ)が郵送されます。

社会保険加入後の手続きとして、今まで加入していた「国民健康保険」または「任意継続の健康保険」の資格喪失手続をします。今まで加入していた、市区町村・健康保険組合へ「社会保険に加入した」旨、連絡をします。
(これを読んでいるのがご担当者であれば、他の方に教えてあげて下さい)

公的年金は、とくに手続は要りません。基礎年金番号で管理されているからです。

病気・ケガなどで医療機関にかかっている場合は、事務局か受付の方に、「今社会保険の加入手続き中ですので、保険証が変わります」とお伝えいただく方が良いかも知れません。国民健康保険に加入中の場合は、社会保険の健康保険証が出来次第、市役所等へその保険証を持参しての手続が必要です(俗に言う国保の脱退の手続)。

社会保険に加入後は

被保険者証の使い方は、別の機会に書くとしても、会社(社会保険の適用事業所)として、いくつかの義務が課せられています。

毎月の定例的な事務

  • 給与・役員報酬から、加入者(被保険者)負担分の保険料を差し引きします。保険料は、当月分の保険料を翌月支払いの給与・役員報酬から引きます。
  • 口座振替依頼書で指定した金融機関の口座から、保険料(会社負担分と被保険者負担分)が引き落としされます。保険料の合計金額が合わないのは、児童手当拠出金も支払うからです。

年1回の定例的な事務

  • 標準報酬の算定基礎届を出します。1年間の保険料の元になる標準報酬月額を決めます。(社会保険事務所から書類が送られてきます)

社会保険の加入時に、どのようなときに手続きが必要か説明書類を渡されますので、一度は目を通しておきます。

社会保険に新規加入時のよくある質問

Q.非常勤の役員も、社会保険に加入させるのですか?
A.報酬が発生している場合、原則として被保険者にします。非常勤の場合は、その程度により個別に判断されます。ただし、代表者は非常勤はありえないですので、ご注意を。

Q.社長は、他社の役員を兼務しており、役員報酬はゼロだが被保険者の手続をするんでしょうか?
A.役員報酬がゼロであれば、保険料の算出ができませんので、被保険者にはなれません。(報酬ゼロの申立書を作っておきます) 社団法人・財団法人の理事長さんで、役員報酬が支払われていない場合も、同じに考えて下さい。役員報酬が支払われている場合は、被保険者の手続きをしてください。

Q.個人事業で5人以上常勤の従業員がいるので、社会保険に入るのですが、私(個人事業主:経営者)も加入できるのですか?
A.申し訳ありません。個人事業主さんは、加入できません。

Q.今、医療保険は国保組合を利用していますが、社会保険に加入できるのですか?
A.加入できます。
健康保険適用除外申請を、年金事務所に提出することで、社会保険のうち厚生年金保険だけに加入することができます。国保組合で現在加入している証明をもらって下さい。ただし、国保組合で厚生年金保険だけの適用を運用上認めていないところもありますので、ご確認をお願いします。

Q.社会保険の保険料は、いくらですか?
A.給与・役員報酬のざっと15%が被保険者の負担分です。児童手当負担金は少しですが、会社が単独で負担します。
(平成30年1月現在:健康保険で40歳以上11.78%、厚生年金保険18.3%など)

Q.ボーナスには、保険料は掛かってきますか?
A.残念ながら、ボーナスにも、雇用保険と同じように社会保険の保険料が掛かってきます。料率は、毎月の料率と同じです。



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